猟銃所持許可取り消し“著しく妥当性欠く”原告主張認める判決

猟銃所持許可取り消し“著しく妥当性欠く”原告主張認める判決 by NHK

 「砂川市でヒグマを猟銃で駆除した際に住宅の方向に発砲したとして道の公安委員会から銃を所持する許可を取り消された男性がこの処分の取り消しを求めた裁判で、札幌地方裁判所は「社会通念上、著しく妥当性を欠いている」などとして原告の主張を認め、処分を取り消しました。」以上、引用終わり。

 さて、本事件の核心は、結局のところ、取消原因であるヒグマ駆除の発砲が鳥獣保護法38条3項の「弾丸の到達するおそれのある人、飼養若しくは保管されている動物、建物又は電車、自動車、船舶その他の乗物に向かって、銃猟をしてはならない」の構成要件に該当するか否か、該当するのであれば、本件の状況下で違法性阻却事由が認められるのか否かであったと考えます。

 旧鳥獣保護法の判例(東京高等裁判所 昭和49年(う)188号 判決)では同規定は抽象的危険犯とされていることから、厳しい判決が出る可能性もありました。もっとも判例はイノシシ猟での事件であり、本件のようなヒグマ駆除といった公益目的ではなかったという違いはあります。

 裁判所は、諸般の事情を勘案し、形式的にはともかく、当時の状況下での発砲は正当行為であると判断したと私は解釈します。しかし、本件のような人里付近でのヒグマ駆除については、ハンターにとって極めて法的リスクが高い行為であるということも広く明らかになりました。

 つまり、鳥獣保護法によれば、人里付近における発砲は形式的に構成要件を満たしていれば、明文の例外規定もないことから、発砲したハンターのみが責任を負い、立件される可能性があるという構造になっています。

 しかも、立件されなくとも、本事件のように行政庁の裁量により猟銃の所持許可の取り消しもあり得ます。本事件は確定していないので、控訴審や上告審でどうなるかはわかりませんが、ヒグマ駆除におけるハンターの法的リスク回避のためには、関係者の協議や現場での運用、判例法理の解釈で解決するのではなく、立法による抜本的解決を一介のハンターとしても望みます。