北海道砂川市の30代の職員、約400万円着服で懲戒免職

  北海道砂川市の30代の職員、約400万円着服で懲戒免職…おととし12月から「ギャンブルや借金の返済」と説明、刑事告訴へ.・・・by yhaoo! ニュース

 これまで、私はこのブログにて他の自治体のコンプライアンス問題や大企業の不祥事を取り上げてきました。

 また、一般質問において砂川市のコンプライアンスの取組状況等について質問を行ってきたところですが、砂川市においてもこのような事件が起きてしまったことは残念としか言いようがありません。今後も再発防止策等について、議員として議会において提案等していきたいと考えます。

高級車センチュリー購入は「違法」知事に全額請求 山口県に命じる

 山口県がトヨタの最高級車「センチュリー」を貴賓車として購入したのは裁量権を逸脱した違法な公金の支出だとして、元県職員の男性(75)が県を相手取り村岡嗣政(つぐまさ)知事に購入費2090万円を請求するよう求めた住民訴訟・・・by 毎日新聞

 かねてより注目していた裁判でしたが、公金の支出が違法との判決が地裁で出ました。県が上告するのは間違いないのでしばらくは確定しないことが予想されます。

 政策法務という言葉は私が20代の頃から盛んに使われ始めましたが、条文の解釈や条例等の制定だけではなく、訴訟により政策を実現するのも政策法務に含まれています。

 訴訟による政策実現という意味での政策法務については、私自身、議会で解決できない問題を住民訴訟等で解決できないかと考え研究していますが、現職の議員である間は、これを実行するのはなかなか難しいところです。当選無効請求事件においては、最高裁での弁論はありませんでしたが、旭川市国保料訴訟(最高裁平成18年3月1日大法廷判決)のように本人訴訟で最高裁で弁論し、判例百選に載るような裁判をいつの日か行ってみたいものです。

訴状

 本職が起案した訴状を読む機会があったので、自分が起案したものを改めて見直してみました。なお、私自身、訴状を起案したのはこの裁判が初めてではないですが、これほど大部なのは初めてです。目次を付けるのは任意ですが、読み手である裁判官への配慮と自分自身が混乱するため必要だと考えました。長すぎるので5ページまで掲載します。

 長くなった理由は、訴状の前半はほぼ道選管の裁決を引用し、私がそれに反論をするという構成にしたためです。これは、裁判官がいちいち資料を行き来する手間を省き、訴状一本で全ての内容を把握出来るよう配慮したためです。

 どのような文書であれ、誰が読み手であるのか、相手が何を求めているのか考えることが重要です。本職が起案した裁判関係の文書の中には何が言いたいのか不明なものもありましたが、裁判官を納得させるのが訴状の目的である以上、独りよがりな主張は有害というほかありません。常に、簡潔明瞭かつ論理的に構成すべきです。

 なお、私の相手方の答弁書に対する準備書面は、さらに2通あります。事件名については、判決とは異なりますが、提出するとき、高裁に確認の上、この事件名にしたのですが、修正となりました。

 公文書や訴状を起案するのは、やはり一太郎がいいです。キーボードは青軸のメカニカルキーボードを愛用していましたが、この訴状を起案しているときにエンターキーが壊れたのは残念でした。

 

訴状8_12

主張・立証活動について(メモ)

 裁判直後に書いたメモが出てきたので、一部直して掲載しておきます。専門家から見ればおかしな所も多々あるような気がします。今後もこのような事件が多発することも予想されますが、砂川及び道選管の失敗事例を踏まえ、居住要件が争点となるような同様な事件が起きた場合、事実認定について、自信がもてない各自治体選管の担当者においては、率直に弁護士に意見を求め(できれば複数)、さらに、政治的中立が期待される識者を交えた調査委員会のようなものを設置し、事実関係については、その後の訴訟にも耐えうる徹底した調査を行うことで、妥当な結論を導くことを期待したいと思います。調査手法については、スーパークレイジー君事件の当事者である市及び県選管が精緻な調査を行っていることから、これらの調査手法を実務家は参考にすべきと思います。以下、メモです。

 民事訴訟は、当事者が提示する一定の権利または法律関係(訴訟物)の存否についての判断を求めて提起される。また、訴訟上提示された権利または法律関係の存否は、法の規定する法律効果の発生要件にあたる具体的事実が存するかどうかによって決められる。このような法律効果の発生要件にあたる具体的事実を要件事実(主要事実)と呼んでいる。

 公職選挙法9条2項及び10条1項5号よれば、「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者」について被選挙権を有する者としている。

 本条に規定する要件に該当する具体的事実が「要件事実」となる。そして、その証明がなければ、それに基づく法律効果(被選挙権)が発生しないことになる。

 民事訴訟(行政訴訟)がこのような原理によって運用されている以上、当事者としては、訴訟において証拠を整理し、自らの目的にかなった訴訟上の主張・立証として掲示していくという作業が必要になる。 

 住所を有していたことを主張する側であれば、これらの要件事実を文書等の証拠方法により主張・立証していくことが必要になる。また、間接事実も、重要な要素となり、間接事実の存在を「経験則」で推認させることでこれを主張するもの一つの方法である。

 ここで注意しなければならないのは、間接事実についても、客観的に主張する必要があるということである。反対尋問を経ていない「聴取による具体的かつ詳細な(本人の)証言」(令和元年7月11日付け砂川市選挙管理委員会弁明書より)のような要素は間接事実にもなり得ないことに注意すべきである。

 また、事実認定において、重要な点は「経験則」と「動かしがたい事実」であると言われている。しかし、本事件については異議申立時より、現地調査、当事者への聴取及び生活インフラの使用状況といった事実等に基づく事実認定を行えば当選無効の判断は不可避であった。

 なお、当然ではあるが、被選挙権を有していない者が、たとえ当選に必要な得票を得たとしても、その結果をもって違法性阻却事由とはなり得ないことは言うまでもない。そのような事を認めると居住要件を満たさない候補者が格安のアパートを借りて、手あたり次第立候補することを全く抑制することができなくなることからも明らかである。

 このように、原決定が明らかに当選人にとって不利な事実を取り除き、かなり強引な事実認定を導き出している背景として、起案を主導した者の誤った法解釈や基本知識の欠如以上に、何らかの主観的な要素というものが想定されるが、いずれにせよ、公職選挙法等が予定している「住所」という動かしがたい事実を主観的な要素により歪曲したのが、この両選挙管理委員会における事実認定であったと私は考察しているが、真実が当事者から語られることはないであろう。

(参考文献) 

  • 伊藤滋夫「要件事実・事実認定入門」120頁
  • 田中豊「事実認定の考え方と実務」206項
  • 渡辺充「速報税理」ぎょうせい2011年4月11日号26~30頁、同4月21日号28~37頁

スーパークレイジー君市議、当選無効訴訟は最高裁でも敗訴の公算(読売新聞)

スーパークレイジー君市議、当選無効訴訟は最高裁でも敗訴の公算…高裁判決維持の見通し

 記事のとおり、最高裁において弁論が開かれなかったため、高裁判決が維持される見通しです。なお、判決は3月4日です。

 かつて同様な事件の当事者であった私も地方選挙の度にこのような悲喜劇が繰り返されるのを眺めることしかできないのは、なんとも歯がゆい思いです。

令和2(行ウ)7 行政処分取消請求事件 判決全文

 砂川市で起きたヒグマ駆除における猟銃所持許可取消事件の判決について、下級裁判所裁判例速報に掲載されていたので転記しておきます。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=90903

 メディア等では一部切り取られて報道されていましたが、読めば同行者の証言の信ぴょう性等、裁判所がどのような事実認定をしたのかよく理解できると思います。

 なお、本件については被告が控訴しているので、確定はしていません。

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猟銃所持許可取り消し“著しく妥当性欠く”原告主張認める判決

猟銃所持許可取り消し“著しく妥当性欠く”原告主張認める判決 by NHK

 「砂川市でヒグマを猟銃で駆除した際に住宅の方向に発砲したとして道の公安委員会から銃を所持する許可を取り消された男性がこの処分の取り消しを求めた裁判で、札幌地方裁判所は「社会通念上、著しく妥当性を欠いている」などとして原告の主張を認め、処分を取り消しました。」以上、引用終わり。

 さて、本事件の核心は、結局のところ、取消原因であるヒグマ駆除の発砲が鳥獣保護法38条3項の「弾丸の到達するおそれのある人、飼養若しくは保管されている動物、建物又は電車、自動車、船舶その他の乗物に向かって、銃猟をしてはならない」の構成要件に該当するか否か、該当するのであれば、本件の状況下で違法性阻却事由が認められるのか否かであったと考えます。

 旧鳥獣保護法の判例(東京高等裁判所 昭和49年(う)188号 判決)では同規定は抽象的危険犯とされていることから、厳しい判決が出る可能性もありました。もっとも判例はイノシシ猟での事件であり、本件のようなヒグマ駆除といった公益目的ではなかったという違いはあります。

 裁判所は、諸般の事情を勘案し、形式的にはともかく、当時の状況下での発砲は正当行為であると判断したと私は解釈します。しかし、本件のような人里付近でのヒグマ駆除については、ハンターにとって極めて法的リスクが高い行為であるということも広く明らかになりました。

 つまり、鳥獣保護法によれば、人里付近における発砲は形式的に構成要件を満たしていれば、明文の例外規定もないことから、発砲したハンターのみが責任を負い、立件される可能性があるという構造になっています。

 しかも、立件されなくとも、本事件のように行政庁の裁量により猟銃の所持許可の取り消しもあり得ます。本事件は確定していないので、控訴審や上告審でどうなるかはわかりませんが、ヒグマ駆除におけるハンターの法的リスク回避のためには、関係者の協議や現場での運用、判例法理の解釈で解決するのではなく、立法による抜本的解決を一介のハンターとしても望みます。

令和元年6月14日付砂川市選挙管理委員会決定書

 私が札幌高裁に提出した証拠は甲第32号証までありますが、訴状の中でも引用数が多い原決定こと砂川市選挙管理委員会の令和元年6月14日付決定書(甲第5号証)を公開します。

 なお、市及び道委員会の事実認定は、札幌高裁における私の主張・立証活動により全て否定されました。私が弁論において、どのような観点で活動したかについては、機会があれば解説したいと思いますが、令和2年(行ケ)第2号 当選無効請求事件判決にその活動の一端が垣間見えます。

 この決定書の実際の起案者は不明ですが、決定したのは前委員長の其田晶子氏です。また、決定書中の法的主張の部分については、明らかに誤っている主張が見られることから、法律や裁判というものを勉強された人が書いたようには見えないところです。

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最高裁令和3年(行ツ)第61号判決 全文

 本日、特別送達により送付されてきました。また、判決文とともに補助参加人の上告理由書も添付されています。

 なお、事実審での争点は平成31年1月21日から同年4月21日の間、補助参加人は砂川市に住所を有していたか否かでしたが、最高裁では、この3カ月の被選挙権の規定(公職選挙法10条1項5号、9条2項)が憲法15条1項に違反する旨が主な上告理由であり居住実態が争点とはなっていないことに注意が必要です。

 判決では裁判官五人全員一致で、憲法15条1項に違反するものではないとし、補助参加人の違憲である旨の主張を退けました。

 本件訴訟については、当初の予定とは異なり、諸般の事情で訴訟代理人を選任せず、結局、最高裁まで1人でやり切ってしまいましたが、通常の民事訴訟とは異なる行政訴訟(しかも100日裁判)、補助参加人の複数の有名弁護士事務所からなる弁護団による圧倒的物量差等、様々な困難がありました。

 しかし、これまでの知識・経験に加え、裁判例・文献・現地調査等の徹底により、結果を出すことができました。今後、大抵の訴訟は本人訴訟で対応できると思います。機会があれば、国家賠償請求や住民訴訟にもチャレンジしたいです。もっとも、訴訟の性質によっては弁護士費用が敗訴者の負担になる場合もあるので、そうした場合は代理人を選任するつもりです。

 また、同様の訴訟等を検討している人等の参考とするため、私の書いた準備書面や使用した文献等を今後、順次公開していく予定です。

 訴訟費用については道選管及び補助参加人に請求する予定ですが、概算で数万円程度(印紙代、交通費等)です。本人訴訟のメリットとして訴訟費用の節約があげられますが、これについては、事案の内容等に応じてというほかありません。

 労力や勝率のデメリットを考えると、素直に代理人に依頼したほうがよいケースが多いと思われます。金銭等に関するトラブルにおいて、代理人への50万円の費用を惜しみ500万円を失う場合もあり得ます。したがって、安易に本人訴訟をお勧めするものではありません。

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