地方自治体「持続可能性」分析レポート

 令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート が本日、公表されました。このレポートは、全国の地方自治体の人口動向を分析し、特に自然減対策と社会減対策の観点から、各自治体の将来性を評価しています。

 砂川市に関しては、消滅可能性自治体C-②に分類され、自然減対策が必要、社会減対策が極めて必要であると指摘されています。(令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート 4頁)

 自然減対策は、出生率の向上を目指すもので、地域の若年層に対する支援強化や子育て環境の整備などが含まれます。一方、社会減対策は、人口流出を防ぎ、地域に定住する人々を増やすことを目的としています。これには、雇用創出、住宅政策、地域活性化などが必要です。

 令和6年3月定例会において、私は市政執行方針における子育て支援施策について、総括質疑したところです。その趣旨は、当市の社会減対策が自然減対策に比べ不十分ではないのかという問題意識から行ったものです。

 社会減対策については、人口減少の中、各自治体が人を奪い合うというゼロサムゲームの側面があり、私も思う所がありますが、当市においても、レポートの分析結果を踏まえ、より充実した社会減対策を考えていく必要があります。

立候補届出説明会

 本日、市役所大会議室にて候補者説明会がありました。

 説明内容については例年と大きな違いはなかったですが、異なったのは平成31年の統一地方選挙にて、住所要件を満たさず立候補する事案が全国で多発したことを受け、公選法の一部が改正され、罰則が設けられた部分について、かなり強調されていたのが印象的でした。

 砂川市選挙管理委員会も当選無効事件の当事者だったので当然ではありますが、明るい選挙推進協会の標語「みんなの願いきれいな選挙」の実現のため、今回の選挙も不正はゆるさないことを徹底したいと思います。

主張・立証活動について(メモ)

 裁判直後に書いたメモが出てきたので、一部直して掲載しておきます。専門家から見ればおかしな所も多々あるような気がします。今後もこのような事件が多発することも予想されますが、砂川及び道選管の失敗事例を踏まえ、居住要件が争点となるような同様な事件が起きた場合、事実認定について、自信がもてない各自治体選管の担当者においては、率直に弁護士に意見を求め(できれば複数)、さらに、政治的中立が期待される識者を交えた調査委員会のようなものを設置し、事実関係については、その後の訴訟にも耐えうる徹底した調査を行うことで、妥当な結論を導くことを期待したいと思います。調査手法については、スーパークレイジー君事件の当事者である市及び県選管が精緻な調査を行っていることから、これらの調査手法を実務家は参考にすべきと思います。以下、メモです。

 民事訴訟は、当事者が提示する一定の権利または法律関係(訴訟物)の存否についての判断を求めて提起される。また、訴訟上提示された権利または法律関係の存否は、法の規定する法律効果の発生要件にあたる具体的事実が存するかどうかによって決められる。このような法律効果の発生要件にあたる具体的事実を要件事実(主要事実)と呼んでいる。

 公職選挙法9条2項及び10条1項5号よれば、「引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者」について被選挙権を有する者としている。

 本条に規定する要件に該当する具体的事実が「要件事実」となる。そして、その証明がなければ、それに基づく法律効果(被選挙権)が発生しないことになる。

 民事訴訟(行政訴訟)がこのような原理によって運用されている以上、当事者としては、訴訟において証拠を整理し、自らの目的にかなった訴訟上の主張・立証として掲示していくという作業が必要になる。 

 住所を有していたことを主張する側であれば、これらの要件事実を文書等の証拠方法により主張・立証していくことが必要になる。また、間接事実も、重要な要素となり、間接事実の存在を「経験則」で推認させることでこれを主張するもの一つの方法である。

 ここで注意しなければならないのは、間接事実についても、客観的に主張する必要があるということである。反対尋問を経ていない「聴取による具体的かつ詳細な(本人の)証言」(令和元年7月11日付け砂川市選挙管理委員会弁明書より)のような要素は間接事実にもなり得ないことに注意すべきである。

 また、事実認定において、重要な点は「経験則」と「動かしがたい事実」であると言われている。しかし、本事件については異議申立時より、現地調査、当事者への聴取及び生活インフラの使用状況といった事実等に基づく事実認定を行えば当選無効の判断は不可避であった。

 なお、当然ではあるが、被選挙権を有していない者が、たとえ当選に必要な得票を得たとしても、その結果をもって違法性阻却事由とはなり得ないことは言うまでもない。そのような事を認めると居住要件を満たさない候補者が格安のアパートを借りて、手あたり次第立候補することを全く抑制することができなくなることからも明らかである。

 このように、原決定が明らかに当選人にとって不利な事実を取り除き、かなり強引な事実認定を導き出している背景として、起案を主導した者の誤った法解釈や基本知識の欠如以上に、何らかの主観的な要素というものが想定されるが、いずれにせよ、公職選挙法等が予定している「住所」という動かしがたい事実を主観的な要素により歪曲したのが、この両選挙管理委員会における事実認定であったと私は考察しているが、真実が当事者から語られることはないであろう。

(参考文献) 

  • 伊藤滋夫「要件事実・事実認定入門」120頁
  • 田中豊「事実認定の考え方と実務」206項
  • 渡辺充「速報税理」ぎょうせい2011年4月11日号26~30頁、同4月21日号28~37頁

佐伯市職員コンプライアンス推進委員会の報告書が興味深い

 令和3年4月23日に執行された、佐伯市長選挙を巡る公職選挙法違反の容疑で、副市長が逮捕された佐伯市ですが、佐伯市職員コンプライアンス推進委員会が、本事件を受けて取りまとめた報告書を読んでみました。

佐伯市職員の公職選挙法等の違反に係る調査報告及び再発防止に向けた取組について(PDF:605.7キロバイト)

 特に、アンケート結果等からは佐伯市職員の法意識については、懸念すべきことが多いように見受けられます。

 (報告書11頁から抜粋)

 特に7、8、9からは、佐伯市においては、公職選挙法違反に関して職員から逮捕者が出るのは時間の問題だったように思えます。

 また、令和の時代においても、職場内に堂々と、職務と関係ない協力者カード(注)を持ち込み、やり取りしていたのも驚きです。本事件については、職員にも様々な言い訳があるとは思いますが、結局、それはムラ(市役所)社会での屁理屈にすぎないものです。

 日本国憲法の下、法の支配の原理を採用する我が国では、このようなムラ社会の屁理屈も最終的には司法により判断されるという、ごく当たり前の基本を理解していない職員が多いというのがアンケート結果からも見て取れます。

 このように、基本も理解せず、漫然と仕事をしている職員が大多数の佐伯市では、今後もコンプライアンス(法令順守)を維持するのは至難ではないかと考えます。

(注)協力者カードとは、政治活動を行う個人(一般的には、選挙時には候補者となることが見込まれる者)を支持する者が、当該個人の後援会活動に協力する旨を承諾した者の氏名や連絡先を紹介者として記入する形式のものであって協力者カード上には来るべき選挙に関する情報や、投票を呼び掛ける文言は記載されていないことが通常である・・・本件の背景には組合活動との区別をつけられない多数の管理職の存在があり・・・協力者カードの取りまとめであれば、法令に触れることなく、無制限に許されると思っていた・・・と誤った認識を述べたものが多数存在しており、職員の政治活動や選挙運動の在り方について、組合と市が共通認識を持つことが職員全体を違法行為に及ぶ危険性から守ることにも繋がると考える。(報告書5頁)

最高裁令和3年(行ツ)第61号判決 全文

 本日、特別送達により送付されてきました。また、判決文とともに補助参加人の上告理由書も添付されています。

 なお、事実審での争点は平成31年1月21日から同年4月21日の間、補助参加人は砂川市に住所を有していたか否かでしたが、最高裁では、この3カ月の被選挙権の規定(公職選挙法10条1項5号、9条2項)が憲法15条1項に違反する旨が主な上告理由であり居住実態が争点とはなっていないことに注意が必要です。

 判決では裁判官五人全員一致で、憲法15条1項に違反するものではないとし、補助参加人の違憲である旨の主張を退けました。

 本件訴訟については、当初の予定とは異なり、諸般の事情で訴訟代理人を選任せず、結局、最高裁まで1人でやり切ってしまいましたが、通常の民事訴訟とは異なる行政訴訟(しかも100日裁判)、補助参加人の複数の有名弁護士事務所からなる弁護団による圧倒的物量差等、様々な困難がありました。

 しかし、これまでの知識・経験に加え、裁判例・文献・現地調査等の徹底により、結果を出すことができました。今後、大抵の訴訟は本人訴訟で対応できると思います。機会があれば、国家賠償請求や住民訴訟にもチャレンジしたいです。もっとも、訴訟の性質によっては弁護士費用が敗訴者の負担になる場合もあるので、そうした場合は代理人を選任するつもりです。

 また、同様の訴訟等を検討している人等の参考とするため、私の書いた準備書面や使用した文献等を今後、順次公開していく予定です。

 訴訟費用については道選管及び補助参加人に請求する予定ですが、概算で数万円程度(印紙代、交通費等)です。本人訴訟のメリットとして訴訟費用の節約があげられますが、これについては、事案の内容等に応じてというほかありません。

 労力や勝率のデメリットを考えると、素直に代理人に依頼したほうがよいケースが多いと思われます。金銭等に関するトラブルにおいて、代理人への50万円の費用を惜しみ500万円を失う場合もあり得ます。したがって、安易に本人訴訟をお勧めするものではありません。

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砂川市議の当選無効が確定 最高裁が上告棄却 居住実態なし

砂川市議の当選無効が確定 最高裁が上告棄却 居住実態なし by 北海道新聞

 高田氏の当選無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は13日、高田氏側の上告を棄却した。高田氏の当選を無効とした札幌高裁判決が確定した。裁判官5人全員一致の判断。

 以上、引用終わり

 今後の手続きとしては、公職選挙法の規定により高田氏の当選無効の告示及び当選人の更正決定のための選挙会が開催されます。留意点として、公職選挙法96条等のいずれの条文においても「直ちに」と定められていることです。

 法律用語としての「直ちに」は、時間的即時性を強く表す場合に用いられる語であり、「遅滞なく」に比べ一切の遅滞が許されず、また、「速やかに」に比し急迫の程度が高いものとして用いられることが多いとされています(有斐閣法律用語辞典より)。

 したがって、判決文が送達されてきた場合には、即時に、間髪を入れずに告示をしなければならないのです。

(当選人の更正決定)
第九十六条 第二百六条、第二百七条第一項又は第二百八条第一項の規定による異議の申出、審査の申立て又は訴訟の結果、再選挙を行わないで当選人(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては衆議院名簿届出政党等に係る当選人の数又は当選人、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては参議院名簿届出政党等に係る当選人の数若しくは当選人となるべき順位又は当選人。以下この条において同じ。)を定めることができる場合においては、直ちに選挙会を開き当選人を定めなければならない
 
(当選証書の付与)
第百五条 第百三条第二項及び第四項並びに前条に規定する場合を除くほか、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)は、第百二条の規定により当選人の当選の効力が生じたときは、直ちに当該当選人に当選証書を付与なければならない。
 
(選挙及び当選の無効の場合の告示)
第百七条 第十五章の規定による争訟の結果選挙若しくは当選が無効となつたとき若しくは第二百十条第一項の規定による訴訟が提起されなかつたこと、当該訴訟についての訴えを却下し若しくは訴状を却下する裁判が確定したこと若しくは当該訴訟が取り下げられたことにより当選が無効となつたとき又は第二百五十一条の規定により当選が無効となつたときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)は、直ちにその旨を告示しなければならない

河井案里元被告の歳費返還請求 広島の住民、国を提訴へ

河井案里元被告の歳費返還請求 広島の住民、国を提訴へ by 時事ドットニュース

 公選法違反(買収、事前運動)で有罪が確定した前参院議員、河井案里元被告(47)=議員辞職=が当選後に受け取った歳費など計約4900万円は不当利得だとして、地元・広島県内の住民が近く、国に返還請求するよう求める訴訟を東京地裁に起こすことが22日、住民側の代理人弁護士への取材で分かった。

河井案里元議員 歳費4900万円余の返還させるよう求め提訴 by NHK  

 住民らは「買収という民主主義の根幹を揺るがす選挙犯罪を犯して当選無効になった議員は退職者にはあたらず、受け取った歳費などは不当に得た利益だ」と主張しています。国会議員の歳費などについて定めた法律では、国会議員は退職する日まで歳費を受けるとされ、返納する義務もありません。

 以上、引用終わり。

 原告は市民団体「河井疑惑をただす会」及び代理人は自由法曹団に所属する弁護士の方のようです。原告の主張のとおり、この問題については、制度の問題も含め様々な議論が起こることを期待したいです。

 

最高裁判所開廷期日情報(4月24日追記の記事有り)

 令和3年(行ツ)第61号(第一審札幌高裁令和2年(行ケ)第2号)の開廷日程情報(4月21日現在)が最高裁のホームページで公開されています。

 また、私がかねてより注目していた令和2年(行ツ)第300号(第一審東京高裁令和2年(行ケ)第1号)について、4月27日に判決言い渡し期日が指定されていました。

 法廷が違うこの事件と私の事件について、近接した日程により言い渡し期日が定められたことについては、偶然ではないと考えています。

 (4月24日追記)

 4月27日に第三小法廷で判決の言い渡し予定があった令和2年(行ツ)第300号(第一審東京高裁令和2年(行ケ)第1号)については、上告人が4月22日付で辞職したことにより上告を取り下げた模様です。

 

当選無効維持か 5月上告審判決 砂川市議、弁論なく(道新)

 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/533288?rct=n_justice

 先日、簡易書留にて判決言渡期日通知と上告受理申立にかかる「令和3年(行ヒ)第73号」の調書(決定)が最高裁第一小法廷より送付されてきました。上告受理申立については下記の通り裁判官全員一致で受理しない旨の決定がなされました。 

 道新の記事によるところの上告審判決は、上告提起にかかる「令和3年(行ツ)第61号」に関するものです。言渡期日は5月13日(木曜日)午後1時30分と指定されました。

 コロナ禍の状況下、私は仕事の事情もあるので最高裁判所には行けませんが、選管の担当者はこの機会に行ってみてはどうでしょうか。

 口頭弁論が開かれないので、記事の内容どおり、高裁判決(令和2年(行ケ)第2号)が維持される見込みであり、その場合、この事件は私の勝訴で決着がつくことになります。

 なお、上告受理申立てと上告提起の違いは、以下のURLを参照ください。

 https://www.courts.go.jp/sendai-h/saiban/tetuzuki/jokoku_teikijuri/index.html

 その他:最高裁判所の法廷 Q&Aより

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